「天下無双の4人」という表現は言い過ぎだろうか?少なくとも野心的かつ狂逸な音楽を奏でる集団という点で、ブレイク・ミルズ/ピノ・パラディーノ/サム・ゲンデル/エイブ・ラウンズはその言葉に偽りないカルテットだ。
48年ものキャリアを持つウェールズ出身の“知る人ぞ知るセッション・ベーシスト”・パラディーノとミルズの2人の連名で、突如発表した2021年のコラボレーション作『Notes With Attachments』はエッジィなリスナーたちの心を秒で掴んだ。
古くはゲイリー・ニューマン、フィル・コリンズ、ドン・ヘンリー、近年で知られるところではディアンジェロやジョン・メイヤー、アデルなど数え切れない名だたるミュージシャンのバックを努めた敏腕セッションマンが初の主役に躍り出ただけでなく殆どの楽曲を書き下ろしたという事件。
加えて、アメリカ気鋭のプロデューサーでソロ・アーティストであるミルズが制作、演奏と全方位で関わり、心地よいグルーヴと難解でもあり、ポップさすらも兼ね備えた怪作が誕生した。
この作品の空気に歪みのようなアクセントを生み出し存在感を示した第3の男が、ゲスト参加したサックス/マルチ奏者のサム・ゲンデルだ。
『Notes~』からの最初のサブスク配信となった「Just Wrong』の初っ端から響き渡るゲンデルの”あの”脳が揺れるサックスの音色でこのプロジェクトに開眼した人も少なくないと思う。ご存じのように6月の「FESTIVAL FRUEZINHO 2022」のSam Gendel & Sam Wilkesに続く2度目の来日。コロナ禍で遠のいていた「サム・ゲンデルへの渇望感」を一気に回収する最高の舞台となる。
4人目は、唯一アルバムには関わらなかったメンバー、ドラム/パーカッションのエイブ・ラウンズ。この編成での幾度かライヴも行い動画をご覧になった人もいるだろうか。ミルズのソロ作やアンドリュー・バード、エイミー・マン、ミシェル・ンデゲオチェロなどアメリカーナからジャズまで幅広い分野でバックを務め、昨年リリースした初のソロ作『The Confidence To Make Mistakes』ではその卓越した才能を全開放している。
ミルズ/パラディーノ/ゲンデル/ラウンズが日本で繰り広げられる演奏は、『Notes With Attachments』の延長線にある”まだ見ぬ景色”であり、皆目見当が付かない要素をはらんでいる。
間違いなく数年後には語り草になる歴史的ドリーム・チームの目撃者となる千載一遇の機会をお見逃しなく。
text by Hideki Hayasaka