VOICE

FRUE × MIDORI.so
「withコロナで見えた音楽とイベントの原点」トークダイジェスト<後編>

FRUE運営チームが拠点としているシェアオフィスMIDORI.so(みどり荘)主催の配信トークイベント「withコロナで見えた音楽とイベントの原点」が7月16日に開催されました。
コロナ禍で行われた2020年のフェスの様子だけでなく、インディペンデントなフェスならではの秘話や珍事件もたっぷり披露されたトークの模様の一部を、2回にわたってお届けします。

司会進行:増田早希子(MIDORI.so コミュニティオーガナイザー)
ゲスト:山口彰悟、吉井大二郎、松橋美晴(FRUE運営チーム)

どたばたで開催した2017年FESTIVAL de FRUE

―FRUEは2012年にクラブイベントとして始まりました。フェスにしようと思った理由は?

山口 クラブや夜遊びに飽きてきた少し上の世代を狙ってお客さんを呼びたかった。(山口と同年代の40代前後の)友人にも来て欲しかったので、そうするとテクノミュージックでなくバンドも呼びたいなと。

吉井 (2017年1月に渋谷WWWXで開催した)エルメート・パスコアールのライブが大成功したのもありました。(編集注:この時の特別編集パンフレットはFRUE オンラインショップで販売中)経済的にも余裕ができ、これまで都内各所で開催してきたイベントを発展させて、2017年から静岡県掛川市のつま恋リゾートを会場に始めたのがFESTIVAL de FRUEになります。初年度にジャジューカ(Master Musicians of Joujouka)を呼んだりとか…カオスすぎて何も残ってないので(笑)2018年のアフタームービーを。

松橋 こんなこと言っていいのか分からないけど…音楽はめちゃくちゃ好きだけど、フェスに行ったことなかったんです。超インドア派だしフェスとかキャンプとか無理、寝袋で寝たことがない。アマゾン行ってハンモックでは寝ることはあるんですけど。

山口 最初、東京タワーの下で会ったんだよね。

吉井 なんかチャラい(笑)

松橋 当時ブラジル大使館のイベントの仕事をやってて、会場が東京タワーの下だったのでそこでアニ(山口)を紹介されて。「これから静岡でフェスやるんだけど美味しいご飯屋さんない?」って聞かれて。フェス飯じゃなくてしっかりした美味しいご飯屋さんがやりたいと。それでオススメのお店を紹介しようと思って、気付いたら全部出店管理やらされてたっていう。

(一同笑)

松橋 誰もいなかったからやるしか選択肢がなかった。それ以来、毎年帰ろうと思いながらやってますね、去年はそう思わなかったけど。でも毎年激しいですよ。最初は特にひどかった。ガラガラドッシャーンって感じですよ、ほんとにすごい人たちがいるもんだって。

山口 まあでも良くやったし、なんとか形にはなった。

吉井 フードも美味しいお店が出てくれたし、ジャジューカやVOODOOHOPはじめ海外アーティストもよく来てくれたなって顔ぶれが実現できた。

左から松橋、山口、吉井
費用対効果度外視だから実現できるブッキング

―ジャジューカ呼べた経緯は?

山口 ブッキングはタイミングと運命しかない。ジャジューカ呼べた経緯は…まあメール送ったら返ってきたっていう(笑)

吉井 わかりやすく言うとそうだけど、今までエージェントがいなくてコンタクトのしようがなかったんですね。今はエージェントがちゃんとついてて、その人に連絡が取れる状況だったから、話を詰めて行けば普通の海外アーティスト同様に招聘できる流れにはなった。

<ジャジューカ(The Master Musicians of Joujouka)>
モロッコ・ジャジューカ村を拠点とするスーフィ(イスラム神秘主義の修行僧)によって構成された楽団。数千年以上の歴史を持つその音楽は1950年代にローリングストーンズのブライアン・ジョーンズによって知らしめられ、欧米のビート詩人やヒッピー達を魅了してきた。FESTIVAL de FRUE2017では総勢17名をモロッコから招聘。HALL STAGE上の演奏のほか、来場者と一体となって演奏が行われる一幕も。

山口 でも経緯っていうより…みんな呼ばないよね。来ると思わないというより、例えばジャジューカはモロッコから大所帯の楽団で来るし、予算を考えると割に合わない。普通だったら見れないようなアーティストを定期的に呼べてるし、(その裏にある)苦労をお客さんも感じてくれてるのかもしれない。

松橋 いちリスナーとして聴きたい会いたいって気持ちが主催者にもある。費用対効果度外視で呼ぶのがすごいなと。知らない人いっぱいいるけどとりあえず聴いてみようって人も多いと思う。

Voodoohop(ヴードゥーホップ)
ブラジルの伝説、トン・ゼー来日珍秘話

山口 じゃあ今トン・ゼーのTシャツ売ってるから、トンゼー呼ぶのがどんだけ大変だったかバナシしようよ(笑)彼はブラジルの伝説的なミュージシャンで、ブッキング当時はまだ来日経験がなかったんです。僕たちが昔関わってたTPCでも呼ぶ話があったけど実現しなかった。

<トン・ゼー>
60年代末ブラジルのあらゆる文化に革命をもたらしたムーヴメント・トロピカリアを生み出した表現者の1人。独特の歌い回しは、世界中のシンガーソングライターに広く影響を与えている。2019年のFESTIVAL de FRUE出演、ライブ@三鷹市公会堂光のホールが初来日ツアーとなった。

吉井 2018年にホームページ経由で連絡したけど全く返事がなく、2019年もメールを出したけど返ってこなくて。

山口 これは見てないなと。それでトン・ゼー好きの美晴ちゃんに話して。

松橋 2000年から2年ほどブラジル・リオデジャネイロに住んでたので、私の青春イコール トン・ゼー!めちゃくちゃかっこよくて、ライブは見に行ったことがないけど毎晩踊りながら聴いてた。来日したことがないトンゼーを日本に呼ぶことになったら、私以外に誰がやるの?!って。

山口・吉井 (笑)

松橋 まず連絡先を探すところから始めたんだけど、どこに聞いても連絡先が分からなくて。でも(出張で行った)アマゾンの帰りに同じ船に乗ってた人が「サン・パウロでピアニストやってる俺の友達は知ってる」と!その人からもらった連絡先をアマゾンのホテルからFRUEチームに送ってブッキングしてもらいました。

吉井 サン・パウロは日系人が多いので、トン・ゼーも東洋医学やヨガにすごく興味があって、日本に行くことが一つの夢だったとメールが返ってきた。

山口 よしこれはいけるぞー!!ってなると思ったら、トン・ゼーは当時82歳、マネージャー役の奥さんも年配で。

吉井 雰囲気の話をずっとしてる感じで全然決まらない。

松橋 リアルじゃない夢の国に行くような感じで「ふふ〜行きたいね、でも寒いなあ、飛行機苦手だ」とか。これは困ったぞと。(トン・ゼーからしたら)実体のないよく分からない日本人たちが「呼びたい」と言っててリアリティがない。だから最終手段としてリオ在住の友人で、私よりもトン・ゼーファンのナオちゃんに、スーツを着てサン・パウロのトン・ゼーの家まで行ってもらえないかとお願いしたんです。「トンゼー呼ぶなら最高じゃん、うちらの夢が叶っちゃうどうしよう?!」って言いながら、次の日にはリオから飛行機で行って話をしてくれて。ナオちゃんもトンゼー愛を語って、FRUEは大丈夫だと。そしたらトン・ゼーが「ナオが僕のことを日本に連れて行ってくれるなら僕行くよ」と。これまでの全FRUEのご褒美がこれかなって思った。

吉井 トン・ゼーは確かにニッチなアーティストだったけど、出演が決まった時の告知はFRUEのSNSの中で一番バズった。やっぱり知る人ぞ知るアーティストだったし、初来日ということですごく盛り上がった。

FESTIVAL de FRUE2019より。パフォーマンス中、背景に歌詞を投影したいという要望がトン・ゼーからあり実現。

松橋 トン・ゼーはただ音楽をやってるんじゃなくて、社会風刺もあってすごくかっこいいこと言ってる。ちゃんと音楽のメッセージを伝えないとやる意味がないんじゃないかと思ったから(歌詞は)すごく難しい翻訳があって大変だったけど、やったったよね。

トーク全編は是非youtubeでご覧ください!

<トーク参加者 プロフィール>

山口彰悟

FRUE プロデューサー&ディレクター / 1977年熊本県生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒。ライブの原体験は10歳のときに生で観た立川談志師匠の落語。大学卒業後は、フリーのライターとして活動しながら様々な職を経験。『愛・地球博’05』『Greenroom Festival’06』『TAICOCLUB’06』で、イベント制作と運営、『True People's CELEBRATION’06』『Organic Groove』の後期コアスタッフとして人生を変える体験の手伝いをした。
2012年3月より、年に2、3回のペースでイベント『FRUE』を開催。2017年より静岡県掛川市で行われる野外音楽フェスティバル『FESTIVAL de FRUE』のプロデュース&ディレクションを担当。

松橋美晴

FESTIVAL de FRUEフード担当 / 青森県上北郡出身。2001年に単身渡伯。リオ・デ・ジャネイロ州コパカバーナに住み、エキサイティングな街を満喫。帰国後はブラジルと日本をつなぐコミュニティーファクトリーKIMOBIG BRASILを設立し、日本に存在するブラジル人コミュニティなどでブラジルライフを実践。ブラジル料理研究家、ブラジル食材販売BRASIL KITCHENプロデュース、FRUEのフードディレクター、ブラジル人ミュージシャンのツアーアテンド、アマゾン音楽DJ、アマゾンの文化や現状を伝えるAMAMOS AMAZON. Incの取締役も務める。

Dai Yoshii

FRUE 裏方担当 / 東京生まれ。 2002年の「True Pemple's CELEBRATION 」にボランティアで参加した事から音楽業界の道へ。夢破れ石垣島でアイランダーとして生活するも1年後には東京へ帰還し山口とFRUEを始動。FRUEと並行しながらcomtrarede、WWW等でも勤務し2018年にiftah ya simsimを設立し、現在に至る。

ホスト:MIDORI.so

みどり荘は、これからの働き方の可能性を追求すると共に、個が尊重される社会においても(そのような社会だからこそ)、大切な拠り所となるであろう仲間とともに働くスペースです。様々な仕事/国籍/趣味/考えを持つメンバーが集まり、その混沌を通して生まれる「何か」をみんなで楽しめる場を目指しています。

イベント概要
日程|2021年7月16日(金) 20:00-21:30
場所|オンライン( ZOOM配信/youtube配信)
参加費|無料