VOICE

音楽の旅を支える料理人たちの本気のステージ FRUEフード2021

にわかに「音楽フェスらしからぬ」と毎年評判のFESTIVAL de FRUEの飲食出店。現に参加店舗のシェフたちは、ミュージシャンと同じくらいプライドとこだわりを持ってるアーティスト。食材にこだわり抜いたお店も少なくなく、本気で美味しい食事を提供しています。
今回のVOICEでは、そんな知る人ぞ知るハイクオリティラインナップを毎年作り上げているフード担当の松橋美晴、岡千晴がその裏側、開催までの道のりを毎年共にするからこそ書けるイチオシポイントをピックアップしてお届けします。

料理人もミュージシャンと同じアーティスト

私がFRUEに参加することになった経緯はこちらの記事でも少し話しましたが、「料理人もミュージシャンと同じアーティストである」という思いはいっつもマントラのように持ってて。だから、彼らのステージで好きなことをやらせてあげたいという目標に向かって毎年取り組んでいます。

FRUEフェスのフードがすベてここからスタートして、今も基調を作ってるという意味で、まず<SIMPLES>(シンプルズ)について特筆させてください。
FRUEの飲食店スカウトをやってほしいと声をかけられた1年目(2017年)、まず一番最初に思い浮かんだのが、当時静岡在住だったため通い詰めていたこのイノベーティブレストラン。うわっつらだけ地産地消とか生産者万歳なレストランが多いなか、<SIMPLES>は静岡の”テロワール”に真っ向から向き合い、ガチで毎日毎日本気で勝負している。そんな最高のレストランが入ってくれれば鬼に金棒、成功したも同然と思った。今思うと、フェスを全く経験したことのない、アウトドアも苦手な(ブラジルのアマゾンではハンモックで寝られるけど)音楽フェス門外漢の私だから<SIMPLES>が最初に浮かんだのかなって。

しかし静岡の第一線で活躍する<SIMPLES>、全国からお客さんが押し寄せる土日を休ませてまで参加してもらうメリットなど微塵も持ち合わせておらず、どこの馬の骨かもわからないFRUEなんぞ、ハイリスクのみでOKしてもらえないと思った。やりたいって思ってくれたとしても、なんの保証もできないわけで、大打撃を受けるかもしれない。「私は本気で料理人もアーティストだと思ってる」ということしか言えなかったが、それでもシェフの井上靖彦さんは「おもしろそう!」と言って即決してくれた。この人ROCKだ!って思いました。

家族構成のような世代のトリオが織りなす静岡キュイジーヌ<SIMPLES>
写真右はオーナーシェフの井上靖彦さん。FRUE出店時はジャンル横断型店舗となるため、今年はブラジル料理を提供。実店舗には初開催時からのFRUEのポスターが貼られている。音楽を愛する井上シェフ、毎年FRUE開催日が近づくと気分が盛り上がるのか出店予定メニューが一気に増えます。ちなみに井上シェフは毎年店舗営業が終わった後も深夜までイベントを楽しんでいるので、会場で見かけたら声をかけてみて!
井上シェフがパーカッションで参加するサンバチーム「ブロッコ シズオカ」は2020年に続き今年も某日ゲリラライブ決行!去年は井上さんの粋な計らいで無料で振る舞われ場を盛り上げたカイピリーニャ&パステウ(ブラジルのカクテル&軽食)、今年はいかに?

料理人たちは「自分たちのフェス」だと思ってるから、すんごく厳しい。私たちがブレそうになったら「料理人を盛り上げていきたいって言ってたじゃん!」「FRUEどうなってもいいのか!」くらいに怒る。それはFRUEの一員として関わってくれるから。「FRUEがかっこよくなきゃ自分たちのモチベーションが保てない」とまで言ってくれる彼らの味方として、私もいつも走り抜いてるつもりです。
 FRUEはそもそも音楽フェスとしては小規模な方だけど、それを踏まえても出店者数、食数とも絞ってできる限りのフードロス抑制にも取り組んでます。それが結果的に出店者にとってもフェアに売上が立つ状況にもつながってるので、精神論だけじゃない部分も大事にコーディネートしてます。

これまで4回FESTIVAL de FRUEをやってきて、フードの方でもお客さんが育ってきたなあと思うし、食の体験が育つことができる場だって自信がある。レストランで美味しいものを食べると「こんなところで食事するとこんなに美味しいものに出会えるんだ」「このペアリングはいいな」って発見があるでしょ?発見があれば次の行動にもつながって、人生がどんどん豊かになってく。だからFRUE開催時だけじゃなくて通常営業してる時も、ぜひお店に足を運んでもらいたい。音楽に例えると分かりやすいと思うんですけど、フェスに行って初めて知ったミュージシャンがいたら「その場限りで終わり」ではもったいなさすぎるでしょ?次のフェス開催までの1年間、いかにその余韻で楽しむか、そこまで提案できてこそ音楽フェス!実際<荒木町ろっかん>にはそうやってFRUEファンが頻繁に集ってるみたい。

音楽好き店主の自家発酵メニューが豊富<荒木町ろっかん>
店主 福田健大郎さん(写真中央)は大の音楽好きそしてFRUEヘビーファン。「店舗出店できなくても手伝いにいきます」と言ってもらったこともあるほど、何がなんでもFRUEに行きたいという気概が半端じゃありません(ありがたい!)そんな福田さんに引き寄せられた音楽好きなお客さんも多い実店舗では、様々な食材が発酵されており、タイミングによってはカウンターの瓶に発酵きのこなどが並んでいます。今年は自家製麹を使った甘酒の豆乳ラテと、毎年おなじみ羊肉メニューをお楽しみに!

私たちがフードを通して感じてほしいことを汲み取ってくれるお客さんは多いことは本当に嬉しく思います。数十分待ちでもじっくり待ってくれるお客さんも普通にいるし、フェスなのにワインを本気になって飲み比べて選んでるお客さんがいたりしますし。毎年誰かしら食通の人が「なんでここにこんなに沢山ワインあるんですか?!」ってワインのラインナップを目前に頭抱えてるらしい(笑)音楽を楽しむ旅のひとつとして、食を大事にするお客さんが多いのもFRUEの良さだって料理人も言ってるし。

ワイン好きも驚きの充実の取り揃え<Un jour MARCHÉ(アンジュール マルシェ)>
佐藤大高さんはFRUEオフィシャルバーのコンシェルジュ的存在。ワインと日本酒がイチオシですが、他にも焼酎、ビール、ジュースまで充実のラインナップ。今年はゲストレセクターとして日本酒界隈を盛り上げているコメジルシ(東京・湯島)の店主HAL氏も日本酒セレクトをサポートしてくれます。

FRUEって出演アーティスト発表前なのにお任せスタイルでチケットを買う人がかなりの割合いるらしいんですけど、それってすごいことだなと。フードもお任せスタイルで楽しんでもらう要素のひとつになれたらいいですね。料理人の顔ぶれは間違いなく面白いし、毎年行けば必ず美味しいご飯とお酒がある!ってこちらも自信持って保証します。

あとこれだけはどうしても参加者に意識してもらいたいってことがあって。料理人が自分たちのフェスだと思ってるのと同じように、お客さんにもそういう気持ちで料理人たちに接してほしい。例えば不満や不足を感じることがあるとしたら、SNSに書く前にまず現場で直接言ってほしいんです。料理人たちは、顔と名前を出してる自負がある。それに、そういうツールがあっても、結局拾い上げて伝えるのは生身の人間なんですよね。同じフェスに参加する者同士、共同体になって音楽も食も楽しみましょう!!

そのほか、常連の出店者を一部ご紹介
お酒との相性抜群!日本人シェフの繊細さが光るインパクト大四川料理<お燗と中華 華音>

<SIMPLES>井上さん、<Un Jour MARCHÉ>佐藤さんともゆかりが深い静岡市のお店。シェフの登崎雄介さん・圭祐さん兄弟は日本酒好きが高じ、2020年に姉妹店の日本酒BAR「燗酒BAR [KANZAkE JUNKIE]」をオープン。四川風の味付けはパンチがありつつも、日本人シェフとしての繊細さもあり、熱燗はもちろんワインとも相性がいいです。おつまみプレート片手にお酒をペアリングしていきましょう。

朝から晩まで体にやさしいベジメニューを<TIERRA(ティエラ)>
FRUEの夜間営業といえば、なお店。明け方までプログラムが続く年もここだけは営業を最後まで続けてお腹をすかせた参加者を救います。ベジメニューでありつつ、味わい深く、普段ノンベジの人にもおすすめ。
宮崎からフードトラックで海を越えやってくる<自然派タイレストランMUNCHIES>
地元宮崎産の食材を中心に、トムヤムラーメンなどの麺類やカオマンガイ(写真)などのごはんもの、スープ、無添加ソーセージなどグルテンフリーメニューが並びます。ハーブ好きにはたまらないハーブのボリュームにも期待!ナンプラーやお酢、唐辛子などタイ料理ならではの調味料で自分好みの味に整えて食べられます。
お洒落なカクテルからハードリカーまで<PRBAR>
誰と行っても楽しめる実店舗の濃いカクテルメニュー、FRUEでも全く変わらず楽しめます!FRUEの音に共鳴するかの如く、世界の薬草酒をベースに ”美味しく上がって抜けも最高‼︎" をコンセプトに構築されたメニューは音のお供に必須。メスカルやアブサンなど、ちょっとクセのあるハードリカーも得意ですが、お酒初心者の方もお気軽にご相談ださい。
初出店ラインナップも豪華!
LA CASA DI Tetsuo Ota
「2026年まで予約の取れないレストラン」(!)の屋外イベント初出店。実はブラジルアマゾン関連の事業も手がける松橋との繋がりもあり数年前からFRUE出店の意向があったので、今回待望の実現となりました。最近では野草など地元長野県の食材をはじめ食のプロデュースを行っている太田哲雄シェフ。今回は軽井沢から地産の信州鶏(写真)を用意して出店します。また太田さんの代名詞的メニューでもある、アマゾンカカオを使用したポップコーンも!ポップコーンと侮ることなかれ、お菓子としてもお酒と合わせても良い重厚な味わい。
ADI TOKYO
最近注目のネパール料理をモダンにアレンジしたレストラン。素材を活かしつつ、心地よいスパイスの刺激のバランスが絶妙。FRUEではネパールカレー(写真)やスパイスを使った定食を提供します。<SIMPLES>で研修経験もあるネパール出身のシェフ アディカリ・カンチャンさんは、2019年にFRUEに来場、パートナーと一緒にフード全メニューを制覇したとの噂。
郷土菓子研究社
菓子職人の林周作さんが実際に訪れた国の人々から習ったレシピで作る、世界中の郷土菓子。アゼルバイジャンの代表的な郷土菓子シェチェルブラ(写真)は、現地でしか売られていない専用のピンセットを用いて1点ずつ幾何学模様をつけています。とても大変で繊細な作業なんだそう。しっかりラム酒が効いて大人なお味のガトーナンテ、スパイス香るバーズラーレッカリーなど、非甘党も満足なお酒に合うお菓子も万全。
Bar Curupira
原宿に不定期で現れるブラジル・アマゾンのバーが、FRUEにも登場。「クルピーラ」はブラジル・アマゾンの動物や自然を守る妖精の名前です。
クラフトビールやナチュールワイン、静岡の焼酎、日本酒にブラジルのハードリカー カシャッサも豊富に取り揃えるFRUE最大のバー。ここでしか飲めないような珍しい銘柄も多数(カシャッサといえば51と思っている人こそ飲んでほしい!!)ソフトドリンク類もここで買えます。
<松橋美晴 プロフィール>

FESTIVAL de FRUEフード担当 / 青森県上北郡出身。大学では栄養学を専攻。2001年に単身渡伯。リオ・デ・ジャネイロ州コパカバーナに住み、エキサイティングな街を満喫。帰国後はブラジルと日本をつなぐコミュニティーファクトリーKIMOBIG BRASILを設立し、日本に存在するブラジル人コミュニティなどでブラジルライフを実践。ブラジル料理研究家、ブラジル食材販売BRASIL KITCHENプロデュース、FRUEのフードディレクター、ブラジル人ミュージシャンのツアーアテンド、アマゾン音楽DJ、アマゾンの文化や現状を伝えるAMAMOS AMAZON. Incの取締役も務める。

<岡千晴 プロフィール>

FESTIVAL de FRUEフード担当 / イベント好きが高じ、会社勤めと並行してフードフェスの運営に関わる。ブラジル好き。松橋が主宰するKIMOBIG BRASILを手伝っていたところ2018年からFRUEに参加。育休中のはずが2021年もがっつりFRUEフードの事務担当。