にわかに「音楽フェスらしからぬ」と毎年評判のFESTIVAL de FRUEの飲食出店。現に参加店舗のシェフたちは、ミュージシャンと同じくらいプライドとこだわりを持ってるアーティスト。食材にこだわり抜いたお店も少なくなく、本気で美味しい食事を提供しています。
今回のVOICEでは、そんな知る人ぞ知るハイクオリティラインナップを毎年作り上げているフード担当の松橋美晴、岡千晴がその裏側、開催までの道のりを毎年共にするからこそ書けるイチオシポイントをピックアップしてお届けします。
私がFRUEに参加することになった経緯はこちらの記事でも少し話しましたが、「料理人もミュージシャンと同じアーティストである」という思いはいっつもマントラのように持ってて。だから、彼らのステージで好きなことをやらせてあげたいという目標に向かって毎年取り組んでいます。
FRUEフェスのフードがすベてここからスタートして、今も基調を作ってるという意味で、まず<SIMPLES>(シンプルズ)について特筆させてください。
FRUEの飲食店スカウトをやってほしいと声をかけられた1年目(2017年)、まず一番最初に思い浮かんだのが、当時静岡在住だったため通い詰めていたこのイノベーティブレストラン。うわっつらだけ地産地消とか生産者万歳なレストランが多いなか、<SIMPLES>は静岡の”テロワール”に真っ向から向き合い、ガチで毎日毎日本気で勝負している。そんな最高のレストランが入ってくれれば鬼に金棒、成功したも同然と思った。今思うと、フェスを全く経験したことのない、アウトドアも苦手な(ブラジルのアマゾンではハンモックで寝られるけど)音楽フェス門外漢の私だから<SIMPLES>が最初に浮かんだのかなって。
しかし静岡の第一線で活躍する<SIMPLES>、全国からお客さんが押し寄せる土日を休ませてまで参加してもらうメリットなど微塵も持ち合わせておらず、どこの馬の骨かもわからないFRUEなんぞ、ハイリスクのみでOKしてもらえないと思った。やりたいって思ってくれたとしても、なんの保証もできないわけで、大打撃を受けるかもしれない。「私は本気で料理人もアーティストだと思ってる」ということしか言えなかったが、それでもシェフの井上靖彦さんは「おもしろそう!」と言って即決してくれた。この人ROCKだ!って思いました。
料理人たちは「自分たちのフェス」だと思ってるから、すんごく厳しい。私たちがブレそうになったら「料理人を盛り上げていきたいって言ってたじゃん!」「FRUEどうなってもいいのか!」くらいに怒る。それはFRUEの一員として関わってくれるから。「FRUEがかっこよくなきゃ自分たちのモチベーションが保てない」とまで言ってくれる彼らの味方として、私もいつも走り抜いてるつもりです。
FRUEはそもそも音楽フェスとしては小規模な方だけど、それを踏まえても出店者数、食数とも絞ってできる限りのフードロス抑制にも取り組んでます。それが結果的に出店者にとってもフェアに売上が立つ状況にもつながってるので、精神論だけじゃない部分も大事にコーディネートしてます。
これまで4回FESTIVAL de FRUEをやってきて、フードの方でもお客さんが育ってきたなあと思うし、食の体験が育つことができる場だって自信がある。レストランで美味しいものを食べると「こんなところで食事するとこんなに美味しいものに出会えるんだ」「このペアリングはいいな」って発見があるでしょ?発見があれば次の行動にもつながって、人生がどんどん豊かになってく。だからFRUE開催時だけじゃなくて通常営業してる時も、ぜひお店に足を運んでもらいたい。音楽に例えると分かりやすいと思うんですけど、フェスに行って初めて知ったミュージシャンがいたら「その場限りで終わり」ではもったいなさすぎるでしょ?次のフェス開催までの1年間、いかにその余韻で楽しむか、そこまで提案できてこそ音楽フェス!実際<荒木町ろっかん>にはそうやってFRUEファンが頻繁に集ってるみたい。
私たちがフードを通して感じてほしいことを汲み取ってくれるお客さんは多いことは本当に嬉しく思います。数十分待ちでもじっくり待ってくれるお客さんも普通にいるし、フェスなのにワインを本気になって飲み比べて選んでるお客さんがいたりしますし。毎年誰かしら食通の人が「なんでここにこんなに沢山ワインあるんですか?!」ってワインのラインナップを目前に頭抱えてるらしい(笑)音楽を楽しむ旅のひとつとして、食を大事にするお客さんが多いのもFRUEの良さだって料理人も言ってるし。
FRUEって出演アーティスト発表前なのにお任せスタイルでチケットを買う人がかなりの割合いるらしいんですけど、それってすごいことだなと。フードもお任せスタイルで楽しんでもらう要素のひとつになれたらいいですね。料理人の顔ぶれは間違いなく面白いし、毎年行けば必ず美味しいご飯とお酒がある!ってこちらも自信持って保証します。
あとこれだけはどうしても参加者に意識してもらいたいってことがあって。料理人が自分たちのフェスだと思ってるのと同じように、お客さんにもそういう気持ちで料理人たちに接してほしい。例えば不満や不足を感じることがあるとしたら、SNSに書く前にまず現場で直接言ってほしいんです。料理人たちは、顔と名前を出してる自負がある。それに、そういうツールがあっても、結局拾い上げて伝えるのは生身の人間なんですよね。同じフェスに参加する者同士、共同体になって音楽も食も楽しみましょう!!
<SIMPLES>井上さん、<Un Jour MARCHÉ>佐藤さんともゆかりが深い静岡市のお店。シェフの登崎雄介さん・圭祐さん兄弟は日本酒好きが高じ、2020年に姉妹店の日本酒BAR「燗酒BAR [KANZAkE JUNKIE]」をオープン。四川風の味付けはパンチがありつつも、日本人シェフとしての繊細さもあり、熱燗はもちろんワインとも相性がいいです。おつまみプレート片手にお酒をペアリングしていきましょう。
FESTIVAL de FRUEフード担当 / 青森県上北郡出身。大学では栄養学を専攻。2001年に単身渡伯。リオ・デ・ジャネイロ州コパカバーナに住み、エキサイティングな街を満喫。帰国後はブラジルと日本をつなぐコミュニティーファクトリーKIMOBIG BRASILを設立し、日本に存在するブラジル人コミュニティなどでブラジルライフを実践。ブラジル料理研究家、ブラジル食材販売BRASIL KITCHENプロデュース、FRUEのフードディレクター、ブラジル人ミュージシャンのツアーアテンド、アマゾン音楽DJ、アマゾンの文化や現状を伝えるAMAMOS AMAZON. Incの取締役も務める。
FESTIVAL de FRUEフード担当 / イベント好きが高じ、会社勤めと並行してフードフェスの運営に関わる。ブラジル好き。松橋が主宰するKIMOBIG BRASILを手伝っていたところ2018年からFRUEに参加。育休中のはずが2021年もがっつりFRUEフードの事務担当。